BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

バニラ・アフィラ(ラン科)

Vanilla aphylla Blume

バニラ・アフィラ


バニラ・アフィラは東南アジアに分布するつる性のランです。葉は鱗片状でとても小さく、茎だけが伸びるように見える所が特徴的です。やや肉質の茎の節から根を出して他の植物の幹やヘゴ棒などに付着します。

香料として有名なバニラ(Vanilla planifolia)の花は春3月~5月に開花するのに対して、バニラ・アフィラは夏の7~10月に開花します。花の直径は4cmくらいと小形で、薄緑色の花被片に白色の唇弁がつきます。唇弁の内側には毛が生えていて、赤紫色になります。バニラが朝開いて昼前には閉じてしまうのに比べて、バニラ・アフィラの花は数日間咲き続けます。

ランの人工授粉は作業の困難なほど小さな花を除けば比較的簡単ですが、バニラの授粉は操作しやすい大きな花でありながら難しい部類になります。バニラ属の花には、柱頭を蓋する小嘴体(しょうしたい)という器官があって、他のランのように柱頭のある窪みに花粉塊を入れる、というわけにはいかないのです。ピンセットや細い棒で小嘴体を持ち上げて、その下にある柱頭に花粉塊を付けてやると授粉します。今回はバニラ・アフィラの花で紹介しますが、バニラでも同様です。ちなみに、バニラ・アフィラの果実は乾かすと長さ7cm、太さ3mmくらいの褐色棒状になりますが、残念ながらバニラの香りはありませんでした。